2025.10.27
虫歯予防に効果的なキシリトール。歯科衛生士が教える選び方と食べ方のポイント
こんにちは、衛生士の蔵元です。
今回はキシリトールについてお話したいと思います。
キシリトールとは

キシリトールは、ソルビトールやマルチトールと同じ糖アルコールの一種で甘みのある炭水化物です。
天然に存在する甘味料であり、多くの果物や野菜に含まれています。
人間の肝臓でも、一日あたり約15gが生成されています。
砂糖と同じ甘さを持つ
キシリトールは、糖アルコールの中でも最も甘く、砂糖と同じ甘味度を持っています。
キシリトールは溶ける時に熱を奪うので、口に含むとスーッとした冷たい感覚があります。
そのため、ミントの味によく合うことから、キシリトールを使ったお菓子には、ミント味が多くみられます。
また、果物の味をより新鮮にする効果や、苦みを消す効果もあります。さらに、冷却効果があることから、布地に応用した夏用の肌着や寝具、そして化粧品も市場にでています。
虫歯の原因にならない甘味料
キシリトールを始めとする糖アルコールは、虫歯の原因になりません。
糖アルコールからは、口の中で歯を溶かすほどの酸は作られないからです。
ソルビトールやマルチトールからは、少量ですが、歯垢(プラーク)中で酸ができますが、キシリトールからは酸は全くできません。
また、キシリトールの方が甘みが強いので、その甘味により唾液も出やすくなります。
酸を作らないこと、そして、唾液の分泌を刺激して酸を中和することが、キシリトールが虫歯の原因にならない理由です。
虫歯を防ぐ甘味料
キシリトールには、「虫歯の発生や進行を防ぐ」という、他の糖アルコールにはない特徴的な効果があります。キシリトールをガムやタブレットの形で一定期間以上口の中に入れると、虫歯の原因となる歯垢が付きにくくなるだけではなく、歯の石灰化を促し、歯を固くします。
さらに、キシリトールには、虫歯の大きな原因であるミュータンス菌の活動を弱める働きも持っています。
このような働きは、他の甘味料には見られない、キシリトールだけの効果です。
どうしてキシリトールは虫歯を防ぐのか
キシリトールが虫歯を防ぐ理由は、大きく二つに分けることができます。
一つ目はキシリトールだけでなく他の糖アルコールも持つ唾液分泌の促進と再石灰化作用であり、もう一つはキシリトールだけが持つ酸を作らない事と、歯垢中の酸の中和促進、ミュータンス菌の代謝の阻害です。
唾液分泌の促進と再石灰化作用では、糖アルコールに甘みがあるため、口腔内に入れると味覚を刺激し、唾液分泌を促進します。
また、ガムとして噛んだ場合には、咀嚼により唾液分も促進されます。ただし、唾液分泌が促進されても、唾液そのものはミュータンス菌の数を減らさせる効果はありません。
また、糖アルコールにより歯垢中のカルシウムレベルが上がるので、歯の再石灰化に役立ちます。さらに、糖アルコールとカルシウムの複合体は歯の硬組織中に進入して再石灰化を促進し、歯を硬くします。
一方、キシリトールだけが持つ作用ですが、ソルビトールやマルチトールなどの多くの糖アルコールは、少ない量ではありますが、口腔常在菌によって、酸を作ります。
しかし、キシリトールは口腔常在菌が利用できないため、全く酸を作りません。
また、キシリトールには歯垢中に存在するショ糖を分解する酵素(シュクラーゼ)の活性を低下させ、歯垢中で酸ができにくくする作用に加え、アンモニア濃度を上げて酸の中和を促進する働きがあります。ミュータンス菌への影響は非常にユニークで、この作用を理解するとキシリトールを使いやすくなると思います。
キシリトールの上手な選び方と食べ方
・キシリトールの含有量が50%以上のガム、もしくはタブレットであること
(ガムやタブレット以外のキシリトール食品、たとえばケーキや飲み物そのほかのお菓子は効果があまりないので注意です)
一般的に日本で市販されているキシリトールガムやタブレットの商品にはキシリトールが何パーセント以上と明記されているものはほとんどありません。そして市販されているキシリトールガムやタブレットのキシリトール含有量はほとんど50%以下になっています。
ご自分がお買いになったキシリトールガムやタブレットの含有量を知りたい場合は商品の裏側にある成分表を見てください。簡易的な計算方法ではありますが、キシリトール量が炭水化物の量の半分以上であれば50%以上になります。
・砂糖や水あめなどはいっていない糖類(0ゼロ)、ノンシュガー、シュガーレスと書かれたもの
・食べ方は1日3回、3か月以上、5分以内
50%以上の濃度のキシリトールガムもしくはタブレットを毎食後5~10gの量(歯科専売品のガムの場合、キシリトールの濃度が100%なので、4~8粒)を3回以上に分けて食べると虫歯予防に効果的です。そして、なんと1日10gを2年間(虫歯になりやすい人は3年間)継続的に食べると、その後に食べるのをやめても予防効果は4年続くとフィンランド・ユリビエスカ保健所の研究結果が出ています。
・歯ブラシは今までどおりにしましょう
私たちが普段食べている食品には必ず糖類が入っているので、キシリトールガムを食後に食べたからと言って歯磨きしなくてもいいというわけではありません。毎日必ず2回以上は、フッ素入り歯磨き粉をつけて歯磨きしてください。