2025.11.17
【歯科医推奨】薬を飲んでいる方の歯科治療ガイド|抗血栓薬・骨粗鬆症薬・高血圧薬の注意点
こんにちは、衛生士の蔵元です。
今回は服用薬が歯科治療にも関係するというお話をしたい思います。
出血が止まらなくなる薬、抗血栓薬
抗血栓薬とは、血液を固まりにくくし、血栓で血管がつまるのを防ぐ薬で、歯科治療時に出血が止まりにくくなる点に注意が必要です。
【飲んでいる可能性のある方】
・狭心症や心筋梗塞の予防をしている
・脳梗塞を起こしたことがある
・冠動脈ステント治療をうけたことがある
【特にこの治療前には要注意】
・抜歯
・インプラント埋入
・歯周外科処置
・縁下(歯茎の下の部分)でのスケーリング
抗血栓薬を服用していると、出血が止まりにくくなります。血の出る治療のイメージがない歯科治療ですが、血の出る場面は意外に多いです。
たとえば歯石をとったり、歯周ポケットの深さを測ったりしても、もともと歯茎が腫れている場合は血が出ることもあります。毎日のブラッシング(歯磨き)で出血することもありますよね。
この程度の出血では特に支障はありませんが、抜歯やインプラント手術など、血が出る治療がいくつもあるのです。でもほとんどの場合、歯科医院できちんと止血できますので、心配しないでください。
手術後に内出血が起こることもあります。
抜歯やインプラント埋入などの手術の場合、お口の中では止血できたとしても、手術が終わってから皮膚に内出血を起こして、顔や首に青あざができることがあります。内出血は通常1~2週間で自然に消えます。
勝手に服用をやめないでください。
「歯科治療のときに血が止まらないと困るから」といって、ご自分の判断で服用をやめないでください。医科や歯科のガイドラインでは抗血栓薬の服用を続けたまま抜歯を行うよう推奨されています。ワルファリンの服用を中断して抜歯した方の約1%(493人中5人)が、血栓が原因の発作を起こし、その80%(4人)が亡くなったという報告もあります。
顎骨壊死を引き起こす可能性のある薬、骨吸収抑制薬
骨を増やして骨折の予防などに使う薬で、長期期間服用している人は顎骨壊死のリスクがあります。
【こんな方が飲んでいるかも】
・骨粗鬆症の予防をしている
・骨ページェット病の治療中
・骨折したことがある
・ステロイド治療中
【特にこの治療前には要注意】
・抜歯
・インプラント埋入
・歯根端切除術
・歯周外科手術
・口蓋および舌側骨隆起の切除術
・骨縁下ポケットのSRP
骨を強くする骨吸収抑制薬には、骨粗鬆症の治療にいちばんよく使われている薬です。
しかし、重大な副作用として、顎の骨が壊死すること(顎骨壊死)があります。特に、抜歯などの外科処置の刺激によって引き起こされることが多いです。
顎骨壊死の予防には、抜歯などの外科処置まで至らないように、日ごろからケアをしっかりして歯の健康を保つことが重要です。
骨吸収抑制薬が顎の骨に集中することが問題なのです。
わたしたちの体では、つねに細胞によって古い骨が吸収されて新しい骨がつくられています。
骨吸収抑制薬は、古い骨を吸収する細胞のはたらきを低下させ、骨が吸収されるのを抑制します。
そして、骨吸収抑制薬は骨にはたらきかける薬ですから、飲めば当然、骨に集まります。さらに、その85%は固い骨(緻密骨)に集まるとされており、顎の骨はほとんどが緻密骨からできているので、顎の骨に高濃度の骨吸収抑制薬が蓄積されることになります。
高濃度の骨吸収抑制薬が蓄積されると、新しい骨ができにくくなります。さらに新しい血管ができることも抑制され、骨の血流が悪くなるため、骨にできた傷も治りにくくなります。
歯石をとるなどの普段の歯科治療の刺激では心配入りませんが、抜歯やインプラント埋入などの外科処置で顎の骨に刺激を与えることで、顎の骨が壊死してしまうことがあります。
また、お口の中には細菌がたくさんいます。抜歯やインプラント埋入などの外科処置でできた傷に細菌が感染すると、傷が治らなくなり、顎骨壊死を発症しやすくなります。
歯肉の増殖を招く薬①
抗てんかん薬
脳の興奮を抑えて、てんかんの発作を防ぐ薬です。歯科治療の内容に関係なく、てんかんの発作が起こる可能性を頭に入れる必要があります。
抗てんかん薬の中で、フェニトインという成分の入った薬を長期期間服用した場合、副作用として、50%以上の方に歯茎の腫れがみられます。歯茎の腫れには、慢性的な歯肉炎にもつながります。歯茎に刺激を与えると腫れが起こりやすくなるため、予防するには歯石の除去など日頃からのケアが必要です。
歯肉の増殖を招く薬②
カルシウム拮抗薬
血管の壁の収縮を抑えて血管を広げ、血圧を下げる薬です。
【このような方が飲んでいるかも】
・高血圧の治療をしている
・虚血性心疾患の予防をしている
血圧を下げたり、狭心症や心筋梗塞などの症状をやわらげたり、症状を改善したりすることを目的として飲んでいる薬はありませんか。これらの薬の中でカルシウム拮抗薬という薬に含まれている成分が長期期間使い続けることで歯茎に影響を与えることがあります。血圧を下げる薬の種類はいろいろありますので、どの種類の薬を飲んでいるのか、ぜひお薬手帳を見てください。
服用している薬がありましたら、お声がけくださいね。