
2025.03.25
喫煙がお口の健康に与える影響
こんにちは、歯科衛生士の蔵元です。
今回は喫煙がお口の健康に与える影響についてお話したいと思います。
喫煙は歯や歯肉の着色などお口にさまざまな影響を与えます。
タバコの全身への害はよく知られていますが、お口への害はあまり知られていません。喫煙すると、歯の表面に「ヤニ」がつくだけではなく、口腔がんの発生率が増加するなど、悪い影響がたくさんあります。特に身近なのは、歯周病の大きなリスク要因となることです。
タバコにより、歯茎にも着色が起こります。加えて、口腔・咽頭がんの発生率が3倍になるほか、味覚が鈍くなったり、口臭を悪化させたりします。また、最近では子供の虫歯発生率や歯内療法の予後も、親が喫煙者か非喫煙者かで左右されるとの報告もあります。
喫煙者と非喫煙は歯肉にも違いがでます
喫煙者の歯茎は暗紫色、ゴツゴツと硬く乾燥して見えます。特に直接タバコの煙があたる上の歯の裏の歯茎でその傾向が著明です。
喫煙者の歯茎が暗紫色になるのは、ニコチンの毛細血管収縮作用と、一酸化炭素が原因です。ニコチンの血管収縮作用により、組織の血行は悪くなります。また、一酸化炭素がヘモグロビンと結合することで、血液の色自体もどす黒くなります。このような理由で、歯茎は健康なピンク色ではなく、暗紫色になります。メラニン色素の沈着も強く認められるほか、歯の近くの歯肉がロール状に肥厚し、線維性でゴツゴツとしています。これは見た目だけでなく、実際に治療をしていても感じることができます。
喫煙は歯周病の大きなリスクとなります
喫煙は歯周病のもっとも大きなリスクの要因の一つです。
喫煙の歯周病への影響は「かかりやすい」「気が付きにくい」「治りにくい」の3つです。まず、生体の本来の免疫機能が喫煙により妨げられるため、歯周病にかかりやすくなります。喫煙者は非喫煙に比べて罹患率が高く、重度に進行した人の割合も高いことがしられています。
また、ニコチンの血管収縮作用により炎症症状が隠され、歯周病が進行しても出血などの自覚症状が出にくくなります。そのため、発見が遅れてしまい、気づいたら重度の歯周病になっていたということがあります。歯茎に赤みや腫れがそれほど目立たないのに、歯周組織の破壊が進んでいることもあります。さらに、いざ治療を始めても、喫煙者の歯茎は硬くて沈着物の除去が難しく、歯周組織の修復も阻害されているため、思うように治療効果が上がらないのです。
喫煙には身体的な依存と心理的な依存があります
禁煙を難しくしているのはニコチンの依存です。禁煙を始めるとニコチン離脱症状が現れ、タバコを吸いたい気持ちが強くなります。歯科では禁煙支援を行っています。
残念ながら保険適応ではありませんが、プラークコントロールと同じように、歯周病の治療には禁煙が効果的です。
依存には身体的と心理的の2つがあり、禁煙達成のためにはこれらを乗り越える必要があります。身体的依存はいわゆる「薬物」に対する依存で、体内にニコチン濃度が減ると「離脱症状」が出て、ニコチンが欲しくなります。
離脱症状を抑えるには、ニコチンパッチなどのニコチン補充療法が有効です。
意外とやっかいなのが心理的依存で、身体的な依存はないけれどつい習慣で吸ってしまうというものです。
これには習慣を変えるのがポイントです。
食後に吸いたくなるなら、食べ終わったらすぐ歯を磨く、コーヒーを飲むと吸いたくなるなら、しばらくは紅茶に変えてみるというような工夫をしてみましょう。
禁煙するとお口の中も健康を取り戻します
継続すれば歯周病のリスクも低下します。
禁煙直後は一時的に歯茎の出血が増えることもありますが、これは正常な反応です。歯茎が健康を取り戻せば、次第に治まっていきます。
禁煙すると歯茎の出血が増えるのは、ニコチンの血管収縮作用がなくなるためです。
また、正常な炎症反応が戻ることにより、赤みや腫れなども増すかもしれません。どちらも一時的なものなので、心配しないでください。
プラークコントロールがきちんとできていれば治まっていきます。
禁煙を続けるにつれ、歯茎は健康なピンク色になり、みずみずしさを取り戻していきます。メラミン色素の沈着も薄くなっていきます。
受動喫煙
タバコを吸っている本人以外にも影響を与えます。
本人は吸っていなくても家族に喫煙者がいる場合などに歯肉に変化がみられることがあります。
換気扇や空気清浄機では受動喫煙をなくすことはできません。
目の前で吸わなくても、髪や衣服、吐く息からも有害物質が排出されます。
また、吸い終わってからしばらくは、吐く息の中にも有害物質が存在することをしっておきましょう。
ご自身の健康のためにはもちろんですが、大切なご家族のためにも禁煙をお勧めします。