
2025.05.27
蕨で「歯がしみる・削れる」でお悩みの方へ|酸蝕症の原因と対策【蔵元歯科医院】
蔵元歯科医院、衛生士の蔵元です。
皆さんは酸蝕症をご存じでしょうか。
虫歯は、虫歯菌が出す酸で歯が溶けますが、酸蝕症は、食べ物や飲み物に含まれる酸で歯が溶けます。
虫歯のないきれいなお口の中でも歯は溶けるので、注意が必要です。
今回は酸蝕症について説明します。
酸蝕症と虫歯の違い
虫歯は一部、酸蝕症は広範囲です。
歯はカルシウムやリンなどのミネラル成分でできていて、酸にふれると化学反応が起こり分解されて溶けてしまいます。
虫歯は、虫歯菌が出す酸によって菌が溶ける病気で、歯の溝や歯と歯の間など、汚れのたまりやすい場所から歯が溶け始めます。ですので、虫歯のできる範囲は限られます。
それに対して、酸性の食べ物や飲み物がお口の中に入ってきて、繰り返し歯と接触することで溶け始める現象を歯の”酸蝕症”と呼んでいます。
飲食物はお口の中全体に行き渡りますから、広範囲の歯に被害が拡大します。
また、胃酸でも歯は溶けます。
歯が溶ける原因は、虫歯の出す酸だけではありません。
身近な市販の酸性飲食物でも、その食べ方・飲み方次第では歯が溶けます。
この場合、酸性飲食物を摂った直後の歯の表面は軟らかくなっています。(軟化)また、継続性の嘔吐がある場合でも、胃酸の影響で歯が溶けます。
※唾液が酸を中和します
→酸性飲食物を飲んだり食べたりしても、すぐに歯が溶けずに済んでいるのは、唾液が歯を補修し続けているからです。唾液の洗浄作用により酸が洗い流され、また緩衝作用により口腔内が中和され、さらには唾液に含まれるミネラル成分によりエナメル質が補修されて、「溶ける+補修する」というバランスが保たれていることで歯の健康は維持されています。
また、逆流性食道炎疾患などの内因性酸蝕歯では、この唾液の作用が、歯だけではなく胃食道にまで及ぶことで、外部から届きづらい部位におけるクリアランス向上に重要な役割を担っています。
歯酸蝕は外見も質も悪化させます
前歯が酸蝕症になると、もともと薄い前歯はさらに薄くなって、透き通って見えてきます。
また、歯の先が欠けるというトラブルが起こることもあります。
奥歯では、そこに噛む力が加わるので、健康な歯と比べて歯がどんどんすり減ってしまいます。さらに虫歯も悪化しやすくなります。
症状としては、冷たい水がしみる(知覚過敏)、歯がへこむ、歯のへこみを噛んだときに痛む(咬合痛)、歯が欠けるなどがあります。さらに、もともと存在していた歯のすり減りや虫歯が悪化しやすくなります。
酸蝕症になりやすい飲食物・食べ方・飲み方
コーラやオレンジジュースなどのソフトドリンク、黒酢やリンゴ酢などのお酢系飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク、柑橘類などの果実、酢の物などが挙げられます。
これらの飲食物を、毎日のようにちびちび飲んだり食べたりしていると、酸が歯に触れる時間が長くなって酸蝕歯になる可能性が高まります。
身近な飲食物には酸性のものが多いです。市販飲料の酸性度(pH)を測定した結果、約73%の飲料が、歯のエナメル質が溶ける数値(エナメル質臨界pH値:5.5)を下回る値を示しました。
また、食べ物についても同様に測定した結果、身近に存在する多くの食品が酸性でした。なぜ人気の清涼飲料水の多くはpH値が低いのでしょうか。
食品衛生法の基準によれば、清涼飲料の殺菌の条件は飲料のpHによって区別され、pHが低いほど加熱条件がゆるくなります。
これは、酸性の水溶液そのものに殺菌力があるからです。このため、高温で加熱すると味が変わってしまう炭酸飲料などのpHが低く酸性度が高くなる傾向にあります。
また、食べ方・飲み方によっても歯が溶けやすくなります。
酸性度の強い飲食物に(ほぼ毎日)摂取する習慣があり、しかも時間をかけちびちび食べたり飲んだりする癖(デスクワーク中の栄養ドリンク、運転中の炭酸飲料、運動中のスポーツドリンクなど)のある人ほど、酸が歯に触れる時間が長く、唾液による洗浄効果も期待できないため、歯が溶けやすくなります。
他にも、前歯で柑橘類などの果物をかじったり、酢の物をすするようにして食べる方は要注意です。
酸蝕歯予防対策
残念ながら、体に良い食べ物がすべて歯にも良いとは限りません。
酸蝕歯は虫歯や歯周病と異なり、ブラッシング(歯磨き)だけで防ぐことはできません。
実は日常生活には酸蝕歯のリスクがたくさんひそんでいます。
歯を長時間酸にさらさない、直接、酸を歯に触れないようにする、酸に触れた歯が軟らかい間は、余計な力を加えないなどが大切です。