2024.09.27
解剖学的要素で分かる、こどもの歯列(歯並び)不正の原因
こんにちは、歯科衛生士の蔵元です。
皆さんは、歯列(歯並び)不正について考えたことはありますか?
今回は歯列不正、とくに子供の歯列不正についてご紹介したいと思います。
歯並びを悪くする要素は「歯に位置やスペースの問題などの解剖的要素」と「口腔習癖の問題などの機能的要素」の大きく2つに分けられます。
今回は解剖学的要素についてご紹介いたします。
歯並びを悪くする解剖学的要素
歯胚(歯の種)の位置や萌出位置、歯の先天欠如、歯の形態や大きさ、上下の顎骨の位置関係や顎骨の形や大きさなどは生来の遺伝的な問題であり、これらは解剖学的要素が強いと考えられます。
骨格性の歯列不正の問題など難症例もありますが、基本的にはこれら形態学的な問題は、早めに問題点を把握し従来の矯正装置などを駆使すれば術者主導で治る可能性が高いです。
子供たちの正常な発育を見守るためには、異常の兆候を見逃さずに早期発見し、対応できるような訓練が必要ですが、現状の把握として口腔内の観察とともに、口腔内写真を撮影しましょう。
写真は視診に比べ、より広い視野で見られます。
こどもの口腔内は変化が大きく、経過観察をする上で写真の比較は必須です。
また、口腔内写真の他にパノラマ撮影エックス線写真も必要です。
前歯部(前の歯)交換期終了までには一度は撮影し、永久歯(大人の歯)の歯胚の数・位置・向きなどを確認します。
さらに、未来を予測するために家族歴なども把握することも重要です。反対咬合(受け口、しゃくれ)、過蓋咬合(噛み合わせた時に前歯が下の前歯を覆ってしまう)などは家族性があり、兄弟で同じような傾向が出てくることも少なくありません。
定期健診に通う子供たちの正常な発育を見守るために、異常の兆候を早めに把握して対応につなげる必要があります。
歯列不正
①叢生(そうせい)
歯とあごの大きさが合わず、歯の生えるスペースが足りないと、歯が前後にずれたり斜めになったりする「叢生」と呼ばれる状態になってしまいます。
見た目の問題もありますが、歯磨きがしにくいことから起きる虫歯や将来の歯周病の問題が挙げられます。
叢生は程度にもよりますが、ささいなケースも含めると9割以上のお子さんに見られます。
原因とそして、硬いものを食べなくなったという最近の食生活が変化してきたことによってあごが小さくなってきたため、という説があります。
歯のスペース不足は、歯とあごの大きさの関係の不調和が原因です。
問題が出やすい部位としては下あごでは細くて回転しやすい前歯、上あごでは最後の方に生えてくる犬歯です。(いわゆる八重歯の状態になってしまうことがあります)
日本では、八重歯は幼さや、小悪魔的なイメージなどが加わるため「笑顔がかわいく見える」と評価されることもありますが、歯並びとしては、歯ぎしりのときに奥歯が離れた状態にならない噛み合わせの悪い状態といえます。
また、通常、上あごは外側に、下あごは内側に力が加わるため、年齢を重ねるうちに下あごは叢生になっていきます。
特に、咬む力が強い場合は避けられません。
②先天欠如
生まれつき歯が足りないことを「先天欠如」といいます。
永久歯の先天欠如は約10%に起こると言われています。
先天欠如があると、通常の対応が難しく、場所や本数にあわせて個別に対応を考える必要があります。
歯の種があるか確認するために小学校低学年頃までに一度はエックス線写真検査をおすすめします。
生まれつき歯の種がないことがあります。
その部位・本数によって歯のスペースに上下差、左右差がでるために、前歯の生え変わりが終わるころまでにあごから歯全体の広い範囲が映るパノラマエックス線検査をします。
このころであれば、親知らず以外の歯はすでに完成しているので歯がそろっているかどうかきちんと確認できます。
特に、歯の発育に左右差がみられるような場合は積極的に撮影した方がいいです。
③歯胚位置異常
まだ乳歯のころにエックス線写真を撮影すると、乳歯の奥の骨の中に歯種である「歯胚」が見られます。
本来の位置とは異なる位置にあったり、大きく傾斜している状態を「歯胚位置異常」といいます。
そのままにしておくと、永久歯が生えてこなかったり、正しい場所に生えてきません。
骨の中の異常なので、エックス線写真撮影をしないとわかりません。
また、放っておくと、ほかの歯に引っかかって出てこなかったり、他の歯の根を吸収してしまうこともあるので、早期発見が必要です。
異常がないか歯の種の位置を確認するため、前歯の生え変わりの時期までにパノラマエックス線検査が必要です。
特に発育に左右差がみられるような場合や生えてくるのが明らかに遅い時は積極的に撮影をしたほうがいいです。
④萌出遅延
生え変わりが全体的に遅いことを気にされることもあると思いますが、身長と同じで歯の成長も個人差があり、問題はありません。
あくまで「歯の年齢」として成長を見守っていければよいです。
ただし、左右差があったり、乳歯がずいぶん前に抜けたのに永久歯が生えてこないような場合は問題となることがあます。
まずはエックス線検査で歯の種の成長を確認することをあすすめします。
⑤乳歯の早期脱落
歯のスペースが足りない状態で乳前歯、乳犬歯が早くに抜けてしまい、永久歯がなかなか出てこないと、そこへ他の歯が移動してしまうため、上下の前歯の中心がずれる原因となります。
また、虫歯が進むなどで乳臼歯が早く抜けてしまうと、6歳臼歯が手前に移動してきてしまうため、永久歯が生えるスペースがなくなってしまいます。
⑥骨格性の問題
歯はあごの骨から生えています。
おごの骨の位置関係に問題があるときは、骨に対するアプローチが必要です。
受け口の場合、上下のあごの骨の関係に大きなずれがあると、歯を動かすような矯正治療だけではカバーしきれません。
骨の問題があると判断したときは、手術の可能性もふまえて大学病院の矯正科等を紹介します。
まとめ
今回は歯並びを悪くする解剖学要素についてご紹介しました。
お子さんの歯並びを気にする方、疑問や不安を抱く方は多くいらっしゃるかと思いますので、何かございましたらお気軽に蔵元歯科医院までご相談ください!
次回は歯並びを悪くする機能的要素についてご紹介させていただきます。